おはようございます。太田雄一です。第203回・農業編43「土壌⑥・土壌の振り返り」
農業編43「土壌⑥・土壌の振り返り」
長い長い寄り道でした。暗いお話もありました。やっと土壌の話に戻れました。
地球は太陽系の中で唯一生命体の住む美しい惑星です。そして、土壌は海と並ぶもう一つの生命すなわちいのちが躍動する場でもあります。
私たち人間や動物は植物に寄生して生きている生き物であると言えます。何故なら自分で無機物を作ることができないからであり、また、ATPというミトコンドリアでエネルギーをつくる為に絶対的に必要な水素イオンや無機物をつなぎ合わせて有機物を作るためにこれもまた絶対的に必要な電子を全く作ることができない生物だからです。
植物は光合成をおこなうことにより電子や水素を日常的に作っています。私たちはこうしたものを植物からいただいて生きているのです。

そうした生物であるという認識をしっかり持たなくてはならないのです。言い換えれば植物に寄生していきている生物であるとの認識です。
土壌には無機物(「ミネラル」を大量に含んだ土があります。砂やシルト、そして粘土のようなものです。

そして、その間には孔隙(こうげき)と言われるミネラルイオンを大量に含んだ空間が無数にあります。そこを生活圏とする土中生物と膨大な数の微生物たちが躍動する場、それが土壌なのです。

そして土壌にはもう一つの役目があります。植物(作物)が生産されることを通して出来上がる大量な有機物。そしてその死骸、その植物を餌とする動物。その動物を餌とする肉食動物の膨大な量の排泄物や死骸の最終受け皿としての場所が土壌でもあります。
この地下工場は音も出さず、臭気も出さずにこうした有機物をもくもくと無機物に切り替えていく作業をしているのです。そこは生物を作り出す生命圏であると同時にその生命が生きていくための生存圏であると言ってよいでしょう。

この場所は一つの偉大なる秩序によって作られ、そして動かされているといってよいでしょう。自然破壊によってこの秩序が破壊されることは仕方ないにしても人為的な破壊は可能な限り避けなくてはならないものであると考えてよいのだと思います。