おはようございます。太田雄一です。第191回・農業編40「F1種・総集編」
農業編40「F1種・総集編①」
農業編35「F1種①・野菜の理想と現実」
ここで、日本における理想の野菜とは一体何かについて少し考えてみたいと思います。本当のところ、価格が安く、無農薬で安全でそして栄養価の高い美味しい野菜(安安美)とお答えしたいのですが 現状はそうなっていないように思います。
理想の野菜「安安美」
①安価で
②安全で
③美味しい
現在国産野菜の60%が外食産業向けに出荷されています。(このデータはコロナの問題以前だったので、今は少し数字が違っているのかもわかりません。)ですから日本の農家は外食産業向けの仕様で野菜果物を作り出荷しているようです。
それでは、外商産業向けの野菜の仕様とは一体何でしょうか。結論から言いますと1.味がないこと。2.菌が少ないこと。3.形、大きさ、重量が均一であること。4.捨てる部分が少ないこと。5.季節変動が少ないこと。6.安価であることだそうです。
外食産業向けの野菜の仕様
①味がないこと
②菌が少ないこと
③形・大きさ・重量が均一なこと
④捨てるところが少ないこと
⑤季節変動が少ないこと
⑥安価であること
調理は機械がし、味は調味料でつけるので野菜には味はいらないそうです。なまじ味があるとレシピがおかしくなり店ごとに味が違うということとなりクレームになるそうです。

こうした条件を満たすためにF1種(First Filial Generation)という種類の種が用いられているのです。
農業編36「F1種②・除雄と雄性不稔」
埼玉県農事試験場で開発された日本固有の黒ナスに東南アジア産の青ナスを掛け合わせた商品価値の高い混血ナスが生んだ方式は、黒ナスの雄蕊(おしべ)をつぼみのうちに取り除き、そこに青ナスの雄蕊(おしべ)の花粉をつけて作るという方法で、一般的に「除雄(じょゆう)」といわれているものです。
これによってメンデルの法則である一代限りのヘテロシス効果が生まれるわけです。しかしこの方法では種がたくさん取れません。

トマトやナスはよいのですが白菜やキャベツ、ブロッコリー、大根、かぶ(アブラナ科)といった野菜は一回の人工交配で10粒程度の種しか取れないので費用対効果が悪く継続できなくなります。
そのためにこの除雄とは違う技術が日本で開発されました。「自家不和合性技術」というのですが、これはアブラナ科の特性を利用した技術ですので、少し後に詳しく説明したいと思います。
この技術は当然アメリカに伝わりましたが、アメリカではアブラナ科の野菜は原則食べません。せいぜいブロッコリーぐらいです。このブロッコリーを除くアブラナ科の野菜は欧米では家畜の餌としてしか扱われていません。ですからニーズがないのです。
菜の花(アブラナ科)の英語名はRape blossomと言い、その意味は参考までに「強◯つぼみ」となります。
そのため、アメリカでは違う研究が行われました。1929年にカルフォルニア州で赤玉ねぎの中に元々雄蕊(おしべ)のない花粉を出さない異常な生体の物が見つかりました。これは極めて少数であったのですが、研究者達は異常個体の品種を増やしていきました。
しかし、赤玉ねぎは決してメジャーな物ではありません。そのため、メジャーな黄色の玉ねぎの花粉をかけます。そうすると50%、50%の確率で赤と、黄色の玉ねぎができます。
次に、雄蕊(おしべ)がない黄色の玉ねぎに普通の黄色の玉ねぎの花粉をかけますと赤玉ねぎが25%、黄色の玉ねぎが75%出来てきます。これを繰り返します。そして100%にするのです。
すべては母親が優先ですので、できた子は全て雄蕊(おしべ)がないものになります。これが「雄性不稔技術(ゆうせいふねんぎじゅつ)」なのです。
農業編37「F1種③・雄性不稔(ゆうせいふねん)」
掛け合わせてできた雄蕊(おしべ)を持たない黄色の玉ねぎに遠い祖先を持つ普通の玉ねぎを畑のそばに置いておくだけで大量の玉ねぎを作り出すことが可能になります。
こうして「雄性不稔(ゆうせいふねん)」の玉ねぎが完成します。1944年の事です。
この「雄性不稔技術」は次にトウモロコシに移ります。トウモロコシにもやはり「雄性不稔」の品種がありこれを玉ねぎのように増やしていきます。
トウモロコシは風により花粉が飛んでいく風媒体の野菜ですので普通のトウモロコシの近くに置くだけでドンドン増えます。これを世界中に輸出して行き、これによってアメリカは大儲けしていったのです。当然トウモロコシが終わると人参やトマトなどに移っていきます。
しかし、こうした一般的にF1種といわれるものは病気に弱く1970年の前半期にはゴマ葉枯れ病という伝染病によってアメリカのトウモロコシはほとんど全滅するなどの被害を受けているのです。

今は病気に強い品種のトウモロコシがF1化しておりこれが世界のスタンダードとなっています。しかし要注意です。この世は多種多様が原則となっており人工的に余り集約すると様々なことが起きます。
貧しい人たちの主食を2種類のジャガイモに絞ったことによりアイルランドで起こったジャガイモ飢饉(1845年~1849年)のように、伝染病によりジャガイモが全滅。その為に100万人が餓死、100万人がアメリカ等へ移住を余儀なくされていったような悲劇となるのです。

農業編38「F1種④・自家不和合性(じかふわごうせい)」
それでは「自家不和合性(じかふわごうせい)」の技術とは何かについてここで述べておきたいと思います。「自家不和合性」とはアブラナ科は近親相関を避けるために自分の雄蕊(おしべ)の花粉で雌蕊(めしべ)が受粉しないという性質を有しています。

しかし、自分のおしべからの花粉を拒絶するという性格は成熟し開花したものだけの性格であり蕾(ツボミ)や老花ではそれがないことを日本の技術者は見つけたのです。自分のおしべが出す花粉でめしべが受粉することが解ったのです。
そうなると同じ個体を一度にたくさん作ることができます。こうした個体は母親の遺伝情報を持っていますので、この後は近親相関を避ける性質を持ちます。そこに他の遺伝子の同種(アブラナ科)の花粉を持ってきますと容易に受粉するのです。

極端なことを言うと白菜にカブのおしべから出る花粉を付けても受粉するのです。これはまるで近親相関、幼児姦淫の世界です。
カブと白菜の畑を交互に作ると自然に多くのカブと白菜の個体を作ることができるのです。しかし、カブは純粋なカブではなく、また、白菜も純粋な白菜ではなくなります。

我々は何を食べさせられているのでしょう。考えさせられます。
農業編39「F1種⑤・F1技術の是非」
そして、先に述べた「除雄(じょゆう)」に戻りますが、「除雄」とは男の性器を強制的に切り取るという行為。阿部定の世界そのものです。

最後に「雄性不稔(ゆうせいふねん)」とは性器を持たない男性を見つけその男性を純粋培養する技術です。これは性的不能者育成プログラミングとでも呼んでよいと思います。こうしてみると野菜の虐待、それこそがF1の技術であると言ってよいでしょう。
その様な技術で作られた野菜を食べているからこそ現代、異常に男性の女性化が進んでいるのではないかと思うのです。
もう一つ怖い話をします。今は交互に畑を用意するような面倒くさいことしなくともハウスの中に二酸化炭素を入れ5%程の濃度にします。空気中の二酸化炭素の濃度は0.0415%ですので100倍程度になります。
そうすると植物は何の抵抗もなく同種のおしべから出される花粉を受け付けます。「自家不和合性」の幼児姦淫は必要がなくなり作業はより簡単になります。
そこに蜂を入れ受粉作業をさせるのです。われわれ人間は窒息しますが蜂は大丈夫です。まるで近親相関を避けようとする意思を無効にし、やりたい放題、無秩序の世界を作り上げようとしているようです。
この話は今から15年も前の話です。私は15年前にこの事実を知って本当に嫌になりました。また、いつか野菜たちの逆襲を受けるのではないかと怖くなりました。彼ら彼女たちはいつまでもおとなしくしてはいないだろうと思います。
現実に雄性不稔種を育てていくと必ず普通の個体(おしべもめしべもある個体)がある一定の率で出来上がってき、その率が少しずつ多くなってきていると聞いています。
私のF1の旅はこれで終わりです。昔のことを思い出しながらこの文章を書いていますが、この15年でF1技術がどうなったのか、その探求は情けなくなって私はやめました。
その探求は無責任ですが皆さんにお任せします。人間の浅はかさがよくわかる話だと思います。
