おはようございます。太田雄一です。第185回・農業編34「土壌・総集編」

「土壌①・土壌と微生物」

今日は土壌についてお話をしていきたいと思います。土壌とは何かということを辞書で引くと
1. 植物の生育媒体。2.水を蓄え、水を供給、水を浄化するところ。3.大気の組成を変えるところ。4.多くの生物の住処と書いてあります。実際にその土壌には膨大な数の微生物が生活していますが私たちにはその姿が見えていません。

土壌とは

①植物の生育媒体。
②水を蓄え、水を供給、水を浄化するところ。
③大気の組成を変えるところ。
④多くの生物の住処

しかし、多種多様な微生物が躍動しているだろうことは容易に想像がつきます。また、そこには
1.モグラ。2.トガリネズミ。3.ミミズ。4.ヤスデ。5.ワラジムシ。6.白アリ。7.ゴミムシ。8.トビムシ。9.ササラダニ。10.ダニ。11.ミミズ。12.線虫等が生活しておりその数は50種類以上と言われています。

実態はよくわからないというのが現実です。私たちはダニというとすぐに有害虫というレッテルを貼りますが、ダニは動物の死骸や枯れ草などの植物の死骸を粉々にするという大切な役目を果たしてくれているのです。

自然は1種類の微生物や虫だけが繁殖することを極めて厳しく規制しています。人間が介在しない限り自然界の中ではその様な事は決して起きません。

今、世界中で猛威を振るっている赤ダニ粉ダニにも本来担うべき役割があるのですが、人間が全ての生物連鎖を農薬等を用いてそれをバラバラに断ち切るという極めて無謀な行為をしている為に生じている事なのです。

「土壌②・ミミズの役割」

土壌生物の中で有名なのはミミズです。通常の土地ではミミズは1㎡あたり数十匹程が生活していると言われています。線虫に至っては数百万匹程が生活しているといわれています。

土壌生物の中で有名なのはミミズです

ミミズはpH4.5以下では生きていくことができません。化学肥料の影響によって土壌pHが下がると彼らの生活圏はなくなるのです。

ミミズはpH4.5以下では生きていくことができません

ミミズの研究で有名なのは進化論で有名なチャールズ・ダーウィンです。進化論を彼が唱えたかどうかは別として、彼は40年かけ丹念にミミズの生態を研究した学者です。

ミミズの研究者だったチャールズ・ダーウィン

現代でもミミズの研究の第一人者でもあります。ミミズ有機物2ミリ以下の砂と一緒に飲み込んで体内で小さくして排泄します。

これは糞塊と言われ微生物の貴重な栄養分となり、微生物の繁殖の場になっていくのです。

また、ミミズは地下にある鉱物質土壌を地表に上げ、地表の有機物を地中深く引きずりこみます。そして有機物無機物混合攪拌するのです。農業の耕耘そのものです。

また、ミミズは土壌内にトンネルを掘りそれによって酸素の供給を楽にしてくれています。チャールズ・ダーウィンによれば温帯の牧草地には、1ha当たりミミズが作る糞土は1年間で20〜40トンにもなります。

これを地面にならすと10年4㎝の厚さとなります。このような仕事はミミズだけではなくアリ、コガネムシ、セミの幼虫も行なっているそうです。

農業編31「土壌③・岩石の種類」

土壌はその骨格となる「岩石(鉱石)」「腐植(ふしょく)」からなっています。

岩石2ミリ以上礫(れき)2ミリ未満細土(さいど)にわかれます。更に細土は更に荒い順から、③砂、②シルト、①粘土にわかれます。シルトの正体は石英(シリカ・SiO2です。

シルトは壊れにくく角ばっているために互いに密接には接触しません。そのために空間を生み出すことが出来ます。この中に水をためることができるのです。

一方、粘土長石火山硝子炭酸雨によって分解されたもので土中でイオンを引き付ける能力を持ったものでもあります。古くは粘土シルト砂土が細くなったものと考えられてきましたが、そうではないことが様々な研究からわかっています。

粘土はその表面にマイナスの電荷をもち土中のプラスイオンを引き付ける能力を有しているのです。多くの元素の正体はプラスのイオンですので、集められた元素イオン(プラス)を大量に植物根毛を介して吸い込むことが出来るようになります。

農業編32「土壌④・腐植とは」

次に腐植(ふしょく)」とは何かという問いには明確にこうだとは言えませんが、おおよそこのようなものではないかと言えると思います。

まず、土中には地上からは動植物の死骸が、地下では土壌生物微生物死骸が絶えず供給されています。

こうした有機物の構成物質は、1.たんぱく質、2.炭水化物、3.脂質、4.リグニン、5.セルロース、6.グリコーゲン、7.オーキシン、8.サイトカイニンであり、これらは土中に住む虫や無限に近い数の微生物たちによって絶えず二酸化炭素、水、アンモニアに綺麗に分解されています。

有機物の構成物質

たんぱく質
炭水化物
脂質
リグニン
セルロース
グリコーゲン
オーキシン
(植物ホルモンの一群)
サイトカイニン
(植物ホルモンの一種)

その過程で様々な中間生産物が生まれてきます。その中間生産物のほか、微生物が分解の際に生成した代謝生産物、無数の元素イオン微生物の死骸などが組み合わさってできたものが所謂「腐植」と言われているものの正体ではないかと思うのです。

農業編33「土壌⑤・腐植の種類」

腐植はその分解の程度により粗腐植(モル)完全に腐植化が進み粘土状になった腐植質(ムル)に分けられます。

腐植質(ムル)の色は黒色シルトを囲みこむような状態で存在していますが、まだ完全に分解されたものではないために電気的には極めて不安定でありマイナスの電荷とプラスの電荷が交互に出来上がっており、これにより多くのイオンを引き寄せることができるようになっているのです。

下図をご覧ください。これはあくまでも想像図(イメージ図)ですがシルトで囲まれた空間には水が溜まっています。この隙間は一般的に孔隙(こうげき)と呼ばれています。

シルトで囲まれた空間、孔隙(こうげき)に水が溜まっている

そしてその中の水には、カルシウム、マグネシウム、カリウム、マンガン、亜鉛、鉄、バナジウム、ニッケル、銅、チタンプラスイオン硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、塩素、フッ素マイナスイオンが豊富に存在しており、それらの水は所謂ミネラルイオンスープと言われるものであると考えてよいと思います。

土壌粘土のように隙間がないものシルトのように空間を作るものにより複雑に入りこんだ構造をしています。そしては常にこの土壌内を激しく行き来していると言ってよいでしょう。

水は土壌内を行き来している

あるときは水がいっぱいになり、また、あるときは一見カラカラな状態になるときはあったとしても絶妙にバランスがとられていると言ってよいと思います。

土壌の世界は絶妙なバランスで調和がとられている