おはようございます。太田雄一です。第187回・農業編36「F1種②・除雄と雄性不稔」
農業編36「F1種②・除雄と雄性不稔」
埼玉県農事試験場で開発された日本固有の黒ナスに東南アジア産の青ナスを掛け合わせた商品価値の高い混血ナスが生んだ方式は、黒ナスの雄蕊(おしべ)をつぼみのうちに取り除き、そこに青ナスの雄蕊(おしべ)の花粉をつけて作るという方法で、一般的に「除雄(じょゆう)」といわれているものです。
これによってメンデルの法則である一代限りのヘテロシス効果が生まれるわけです。しかしこの方法では種がたくさん取れません。

トマトやナスはよいのですが白菜やキャベツ、ブロッコリー、大根、かぶ(アブラナ科)といった野菜は一回の人工交配で10粒程度の種しか取れないので費用対効果が悪く継続できなくなります。
そのためにこの除雄とは違う技術が日本で開発されました。「自家不和合性技術」というのですが、これはアブラナ科の特性を利用した技術ですので、少し後に詳しく説明したいと思います。
この技術は当然アメリカに伝わりましたが、アメリカではアブラナ科の野菜は原則食べません。せいぜいブロッコリーぐらいです。このブロッコリーを除くアブラナ科の野菜は欧米では家畜の餌としてしか扱われていません。ですからニーズがないのです。
菜の花(アブラナ科)の英語名はRape blossomと言い、その意味は参考までに「強◯つぼみ」となります。
そのため、アメリカでは違う研究が行われました。1929年にカルフォルニア州で赤玉ねぎの中に元々雄蕊(おしべ)のない花粉を出さない異常な生体の物が見つかりました。これは極めて少数であったのですが、研究者達は異常個体の品種を増やしていきました。
しかし、赤玉ねぎは決してメジャーな物ではありません。そのため、メジャーな黄色の玉ねぎの花粉をかけます。そうすると50%、50%の確率で赤と、黄色の玉ねぎができます。
次に、雄蕊(おしべ)がない黄色の玉ねぎに普通の黄色の玉ねぎの花粉をかけますと赤玉ねぎが25%、黄色の玉ねぎが75%出来てきます。これを繰り返します。そして100%にするのです。
すべては母親が優先ですので、できた子は全て雄蕊(おしべ)がないものになります。これが「雄性不稔技術(ゆうせいふねんぎじゅつ)」なのです。