おはようございます。太田雄一です。第82回
「野菜が溶ける?野菜の中で起きていること」
野菜が溶けるなんて・・・腐るのではなくどろどろに溶けるのです。昔の野菜はしおれ小さくなることはあってもどろどろに腐ることはありませんでした。
その理由を正しく説明してくれる所も人もおりません。結論から言いますと野菜をドロドロにする原因は硫酸、硝酸、塩酸です。何故そんな強い酸が植物体内に存在するのでしょうか?その酸は一体どこからきたのでしょうか。不思議です。
植物をはじめ、細胞で生きている生物にとって細胞を構成する元素、中でも窒素(N)は大切なものです。先に述べた必須元素にも窒素は含まれています。窒素がなければアミノ酸を作ることは出来ないし、アミノ酸が出来なければたんぱく質が出来ません。たんぱく質がなければ細胞が作れないのです。
しかし、その大切な窒素は土の中には本来無いものです。それではどこにあるのかというとそれは空気中なのです。空気の成分の内78%はこの窒素です。21%が酸素、そしてアルゴン、二酸化炭素と続きます。
二酸化炭素に至っては全体の0.0415%しか占めていないものです。ちょっと脇道にそれますがこれが地球温暖化の原因だというのですから、ちょっと待ってよという声が出るのも当然だと思うのです。
植物はこの窒素が地中にないことを知っているので化学、有機肥料として窒素が土中にいれられると出来るだけこの窒素を多く吸い上げようとします。
通常この窒素は硝酸イオン(NO3-)として土中の根から吸い上げられます。この硝酸イオンは水に容易に溶け、水とともに植物体内に吸い込まれます。硝酸イオンは分解され窒素となりアミノ酸に造りかえられるのですが、余った多くの硝酸イオンは植物体内に豊富に存在する(植物は日中「光合成」として根から吸い上げた水を葉緑体内で太陽の光で分解し1個の酸素と2個の水素イオン(H+)と2個の電子(e-)に電気分解します。)水素イオン(H+)と結合し硝酸(HNO3)を作ります。
また、化学肥料は硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)です。アンモニウム(NH4+)は窒素(N)を取るために必要ですが残った硫酸イオン((SO4)2-)は水に溶け、やはり植物体内に吸収されるのです。
これも植物体内の水素イオンとくっつき硫酸(H2SO4)を作ってしまいます。更には空から降ってくる雨も硫酸です。植物は硫酸と硝酸の脅威に常時さらされる事となるのです。
硝酸と硫酸が植物体内に存在し野菜をどろどろに溶かすメカニズムはこのようなものなのです。こうしたことを防ぐためカリウムイオン(K+)を土中に入れ硫酸や硝酸の水素イオンと置換させ安全な硫酸カリウム(K2SO4)や硝酸カリウム(KNO3)を作り中和塩を作り安定させます。
しかし、そのカリウムは塩化カリウム(KCl)という形で入れられ、残された塩素イオン(Cl-)はやはり水素イオンと結合し塩酸(HCl)を植物体内で作ることとなるのです。