おはようございます。太田雄一です。第26回
「開発で得たものとH君との出会い」
内視鏡洗浄機で一財産を作ってやろうとする私の甘い夢も破れ、残念な気持ちでこの市場から去らねばならなくなりました。
「まさかこんな大きな抵抗が待ち構えているなんて」そんな気持ちでした。その中で得たものはこの技術の驚異的な進歩でした。やっぱり実戦なんですね。全ては。
それから皆さんに一言、内視鏡を使用するときは十分気を付けてくださいね。菌がうようよしています。そうでなければ危険な薬剤が付着しています。それが体の中に入るのです。勿論私は使いません。現状を知っているので怖いからです。

そんなことをしていた最中の事、知人の紹介で知り合ったH君が毎日会社に顔を出すようになっていました。彼は当時32歳、福岡県の出身で工業高校出の男です。このH君は午前中か午後のどちらか必ず毎日来るのです。何も言いません。黙って内視鏡洗浄機の開発を見ているだけなのです。
後で知ったのですが彼は19歳の時ロールスロイスの後ろのシートに座っていた男で、前職は地上げ屋だったそうです。相撲取りのような体形で、出来れば近づきたくないような風貌をしていました。

その彼が一言「先生、今作っている内視鏡洗浄装置、性能とは関係なく必ず邪魔が入り売れなくなるよ。そろそろ次の準備しておいた方が良いよ。」というアドバイスをくれたのです。生意気な奴だなあと思いましたが、出る釘は打たれるという諺もあり十分注意をして進んでいこうと考えていました。
ですから、邪魔が入り本当に売れなくなり市場拡大を諦めざるを得なくなった時もそのショックは最低で済んだのです。